夕暮れの中に見たもの

太陽が眠るための準備をするからなのでしょうか、夕方は少し切ない気持ちになります。

何となくかけている内容のないワイドショー番組も、今の私にはほんの少し安らぎを与えてくれるものです。

17歳になる老犬は深緑のクッションの上ですやすやと寝ていますが、こうして静かな寝顔を見ていられるのも今だけのことでしょう。

主人も連日の激務で体調を崩し、犬と同じように午睡しています。

よほど疲れているのか、寝息も聞こえてきません。

こんなに静かで大丈夫かしら、と心配になり書斎をのぞきに行くとベッドからずり落ちそうになりながらも絶妙なバランスで

グーグーと寝ていました。

心配した自分が途端に馬鹿みたいに思われてリビングへ戻り、今晩の夕飯の献立を考えることにしました。

疲れをとるにはトマトがいいかな、鶏むね肉もいいかな、とあれこれ考えていると、

ふと白いカーテンの向こうについ最近亡くなった私の母の姿が見えたような気がしました。

夕暮れの光に包まれて、きらきらと母の柔らかそうな身体の輪郭が浮かび上がって見えたのです。

「お母さん?!」

私が素っ頓狂な声をあげると、眠っていた犬が

「ワン!」

と吠えて私の足元をグルグルと行ったり来たりしました。

一体私が見たのは何だったのでしょうか。

無意識に母のことを思っていたからこんな見間違いをしたのでしょうか。

お通夜でもお葬式でも泣けなかったのに突然、涙が溢れて

「お母さん、お母さん!」

と何回も叫びました。

そのとき、太陽が今日の残りの力を振り絞り、白くカッと強い光を発したような気がしました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です